疾患紹介 脊椎疾患

脊椎疾患

当院での2014年度脊椎手術症例は年間230件でした。当教室の脊椎班では、脊椎変性疾患だけではなく腫瘍、脊柱変形、関節リウマチ、感染性疾患から、全身合併症のある高齢者や透析患者などの高リスク症例も他科と連携し幅広い分野で手術を行っていることが特徴です。また最近では、早期離床や早期社会復帰を目指して、従来行ってきた顕微鏡手術だけでなく、MISt(最小侵襲脊椎安定術)やBKP(バルーン椎体形成術)などの最小侵襲手術に積極的に取り組んでいます。さらに脊髄モニタリングを併用することにより、若年者だけでなく高齢者に対しても安全に脊柱変形矯正手術を行うよう心がけています。

脊椎疾患の多くは保存的治療で改善することが少なくなく、そのため手術のタイミングが重要です。我々は各脊椎疾患の自然経過と予後を患者様に説明し、薬物療法、ブロック療法、理学療法などの保存療法を十分に行った上で的確なタイミングでの手術をお勧めする方針としています。一方で、運動麻痺が出現した場合や放置すれば予後が悪い疾患に関しては、早急に外科的治療を行う方針としています。大学病院という機関病院の特性上、手術までの待機期間が長い場合があります。そのため早期の手術が望ましい場合には、近隣の関連病院での手術をお願いさせて頂く場合があります。外来受診時には脊椎専門医にお気軽にご相談ください。

手術の特徴

顕微鏡を用いた小切開手術

適応疾患:腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症(片側進入両側除圧術)、脊髄腫瘍摘出術など

専用のチューブレトラクターを用いることにより小切開で小侵襲手術を行います。 術後の創痛も以前よりはるかに軽減され早期社会復帰が可能です。 顕微鏡を用いた小侵襲手術の入院期間は約10日から2週間以内です。

顕微鏡を用いた小切開手術

脊髄モニタリング

適応疾患:脊柱変形矯正手術、脊髄腫瘍、胸椎靭帯骨化症など

当科では、脊髄手術を安全に行うため、上記疾患のような術中や術後に麻痺の出現するリスクが高い疾患に対しては術中脊髄モニタリングを行っています。方法は特殊な麻酔(筋弛緩薬を制限)を用いて経頭蓋的に大脳皮質運動野を刺激して四肢の運動誘発電位を記録しています。手術中に脊髄の操作や脊柱変形の矯正を行うと術後に運動麻痺が発症するリスクがあるため、術中に運動誘発電位をモニタリングすることにより安全に手術を行うよう心がけております。

脊髄モニタリング

最小侵襲脊椎安定術(MISt)

従来は皮膚を大きく切り開いて脊椎を覆う筋肉を全て剥がし、露出させて骨にスクリューを挿入し脊椎の安定化(固定術)を行っていました。当科では、特殊な器具を用い小切開により以前と同様の脊椎固定術を行う「MISt(ミスト)」という最小侵襲手術を積極的に取り組んでいます。この術式を行うことにより患者様の身体への負担は小さくなり早期離床や早期社会復帰が可能となります。
また、従来の方法と比べると術後合併症である感染症の頻度が大幅に減ったとの報告。当然ながら、全脊椎疾患にMIStの適応があるわけではありませんので、脊椎外来(月曜日, 金曜日)までお気軽にご相談ください。

最小侵襲脊椎安定術(MISt)

BKP (バルーン椎体形成術)

骨粗鬆症性椎体骨折に対してはまず保存療法(薬物、装具など)が基本となりますが、患者様の中には保存的治療が効果無く強い体動時(主に寝返りや起き上がり)の痛みが持続したり、骨折椎体がうまく骨癒合しない場合があります。そのような患者様には、BKP (バルーン椎体形成術)の適応の可能性があります。BKPは骨折椎体の異常可動性による疼痛を骨セメントよって骨折椎体を固定する治療です。骨セメントは速やかに硬化するので、術直後から術前に悩まされていた骨折椎体による疼痛は改善します。当科脊椎班では, BKPの施行可能であり、適応のある患者様には積極的に行っております。しかし、骨折状態が酷い例や神経症状を伴っている例では、適応が無い場合もありますので、脊椎班外来(月曜日、金曜日)までお気軽にご相談ください。

バルーン拡張による骨折椎体の整復 骨セメント充填 BKP前 BKP後

BKP (バルーン椎体形成術)

BKP (バルーン椎体形成術)

思春期特発性側弯症

当科は兵庫県予防医学協会が行っている「脊柱側わん学校検診」に携わっており、検診で「要治療」や「要経過観察」判定を受けた児童生徒を中心に診察を行っております。必要に応じて、 保存的治療である装具療法を行い、また保存的加療に抵抗し側弯変形が進行してしまった場合には手術療法を行っております。手術療法の際には、脊髄モニタリングを併用し、安全かつ効果的な側弯矯正固定術に取り組んでいます。脊椎班外来(月曜日、 金曜日)までお気軽にご相談ください。

思春期特発性側弯症

成人脊柱変形手術

当科では海外臨床留学で学んだ脊柱バランスの知識や脊柱変形手術の経験を活かし、高齢者の脊柱変形(側弯、後弯、高度な前傾姿勢、骨折による変形等)に対する手術を積極的に行っております。しかしながら、本邦だけでなく海外でも高齢者の脊柱変形手術の術後合併症は高いとされているため、可能な限り保存的に加療を行い、十分に話し合った上手術の必要性を検討させて頂いております。最近では、手術の侵襲を減らすためにMISt(最小侵襲脊椎固定術)の最新技術である腰椎側方椎体間固定術のシステムを取り入れております。まずは脊椎外来(月曜日, 金曜日)まで受診の上、ぜひご相談ください。

成人脊柱変形手術

透析性脊椎症

透析患者は全国で約30万人といわれていますが、20年を超える長期透析患者は約7.5%とごく一部です。透析性脊椎症は長期透析患者に発症するといわれており、破壊性脊椎関節症では破壊性変化やアミロイド沈着によって下肢痛や麻痺の原因になることがあります。最もリスクが高い脊椎手術の一つである透析性脊椎症の合併症を麻酔科、循環器内科、集中治療室と協力して少しでも減らすように努力しています。