サンフランシスコ短期研修

2014年3月からカリフォルニア州立大学サンフランシスコ校の付属病院(San Francisco General Hospital)へ短期研修を始めました。
現時点では2週間の研修プログラムで希望者があれば日程を調整していきます。

サンフランシスコ短期研修を終えて

サンフランシスコ短期研修を終えて

 2014年3月2日から3月14日までの約2週間、サンフランシスコのUCSF(University of California, San Francisco)に研修して来ましたので報告致します。

 今回の研修のきっかけとなったのは、長崎大学、山形大学などが行っているレジデントのUCSF研修を、兵庫医科大学でも導入をしようという動きからでした。 今まではすでに経験のある先生が研究目的での長期の留学はありましたが、海外で短期に見学を中心とした研修を経験の浅い先生が行うということは今まではありませんでした。 導入には賛否あるため私がまず体験し、それを皆に伝えるという大役を任されたのがきっかけです。 研修を行ったUCSFはサンフランシスコ市内に4つのキャンパス(大学病院を含む)及び多数の施設があり、 市の運営する病院やその他あらゆる研究機関などとの連携を図っている国際的な大学院大学です。

 その中で今回Orthopedic Trauma Instituteの見学を中心に研修をさしていただきました。この施設にはリハビリ医として勤務されている長尾先生がおられ、研修のホスト役をしていただきました。 今回快く研修を受け入れていただき、また大変良くしていただいき大変感謝をしております。出発前からの細やかな配慮により、円滑に研修を始めることできました。 このような経緯があるため、研修を終えて何を経験し感じることが出来たかを中心に書きたいと思います。   一つは日本との医療の違いを知ることができました。外来や手術などの医療の内容としては、大きく変わりは感じられませんでしたが、医療のシステムが異なっていることが感じられました。 それぞれの分業が進んでおり、医師が医療に専念出来る環境が整っていました。例えば学会発表では、発表の発案や方向性は医師が決定するのですが、データの整理、収集や解析は専門の担当者がいるため、 研究の大半を医師以外の専門が行っています。 また、看護師も資格さえあれば薬の処方や医療行為が可能で、ギブスを巻く専門の職業(整形外科技師)、手術の機械出し専門の職業など細かく職業が分かれており医師の負担を減らす仕組みが出来ていました。

 二つ目は人種、文化、宗教の違いを肌で感じることが出来たことがあります。サンフランシスコはアジア人が多く、特に人口の約20%は中華系の人種で占めており、病院内の案内は英語、 スペイン語と中国語で書かれていました。また同性愛者に寛容な地区のため、そのような人たちを否定すると市長選に勝てないと言われています。研修先で知り合った山形大学のレジデントの先生は、 男二人でレンタカーを借りに行ったら、普通に「どちらがワイフなんだ?」と聞かれたとのことです。

 三つ目は英語の必要性です。特にリスニングが難しく、カンファレンスや講義の内容は耳からあまり理解が出来ませんでした。UCSFの先生方とも挨拶程度の会話しか出来ず、 もっと喋れたら‥と悔やむことが多かったです。これは日本に帰ってからの英語に対する認識の向上になりました。

 四つ目はUCSFのレジデントの知識と勉強量の多さです。毎朝のカンファレンスや毎週行われている症例発表を見ていると経験した症例を、明確な論点を元に、関連する最新の論文の内容も取り入れ、 発表を行っていました。また話を聞くと、朝早くの回診に始まり夜遅くまで勉強をしているようでした。

 最後に五つ目ですが、人との出会いが大きかったと思っています。 長尾先生には神経根ブロックや関節ブロックの手技を細かに教えていただき、現地で整形外科技師として仕事をされている柔道整復師の樋口先生にはギブスの巻き方のコツや日本と欧米の医療の話などで盛り上がりました。 またUCSFで研究されている長崎大学の岡崎先生やその先生に会いに来られた長崎大学の尾崎教授、千葉先生など普段ではお話する機会のない方々と接することが出来ました。 そして、岡崎先生はMRIを使用した新しい軟骨の評価の研究発表、千葉先生には海綿骨まで評価出来るマイクロCTの研究発表を聞かしていただき、大変刺激を受けました。

 短期間での研修ではありますが、経験が浅く、また語学力も低いため、実際は私の感じた事以上に得るべきものは多かったのであろうと思います。しかし、今回の研修を通じて大変多くの感銘を受け、心に残るものがありました。 出来ることなら兵庫医科大学でもレジデントの先生方にサンフランシスコでの経験をしていただき、何かを感じ持ち帰ってほしいと願っています。 今回お世話になった長尾先生、圓尾先生、井上先生をはじめとした多くの方々にお礼を申し上げると共に、このような機会を下さった吉矢教授、諸先生方に深く感謝申し上げます。