疾患紹介 骨軟部疾患

骨軟部疾患

当科では、四肢の骨腫瘍と軟部腫瘍を中心に診断と治療を行っています。

診断

手順は骨腫瘍と軟部腫瘍の場合で異なりますが、診察と画像検査が大切です。
骨腫瘍の場合、X線検査の所見が重要で、その所見から良性か悪性を予測します。悪性の可能性があるか、良性でも手術の必要性のある場合にはCT・MRIなどを行います。
軟部腫瘍の場合は、初診時の超音波検査とX線検査を行います。当科では、超音波検査で悪性を疑うときは早急に針生検を行います。これにより95%の患者様で良性または悪性か、どのような組織型かが決まります。これに加えてMRIや造影CTも行います。

治療

整形外科を中心に放射線科、形成外科、小児科、リハビリテーションとともに集学的治療を行っています。当科では1年間に骨腫瘍150例、軟部腫瘍200例程度の新たな骨・軟部腫瘍患者様の治療に携わっています。年間の手術件数は180例程度です。
良性の多くは、経過観察が可能です。しかし、1) 痛みがあるもの、2) 腫瘍が大きくて骨折を起こす前段階の状態、3) 手足の動きを妨げているもの、4) 悪性化し易いもの、5)大きくて見栄えの悪いものは手術の適応があります。
悪性に対しては、1) 化学療法、2) 放射線治療、3) 手術、4) 免疫療法など選択肢があります。当科ではこれらの選択肢を有機的に組み合わせて治療しています。

特徴

当科では骨・軟部腫瘍患者様の生活の質 (quality of life) を重視した診断と治療を重視して、「低侵襲の検査と手術」を推し進めています。具体的には「良性骨腫瘍に対する鏡視下腫瘍切除」「超音波検査による軟部腫瘍の質的診断」などです。その他、可能なかぎり切断をしない手術 (患肢温存術)を行っています。

良性骨腫瘍に対する鏡視下腫瘍切除

骨内の良性骨腫瘍に対して、内視鏡を使うことで、小切開と小さい骨孔から腫瘍切除行っています。腫瘍切除によってできた骨欠損部には、顆粒状の人工骨を入れます。この人工骨は吸収され、自分の骨に置換されます。この手技の利点は、小さい骨孔ため、術後の骨折の危険性や疼痛を少なくでることです。よって、安静固定の期間が短縮され、患者の早期社会復帰が可能となります。

鉗子によって鏡視下腫瘍切除 腫瘍切除後の骨内

術前 術直後 術後1ヶ月 術後12ヶ月 人工骨が吸収して骨に置換され、骨のかたちが正常化しています。

良性骨腫瘍に対する鏡視下腫瘍切除

鉗子によって鏡視下腫瘍切除

鉗子によって鏡視下腫瘍切除

腫瘍切除後の骨内

腫瘍切除後の骨内

術前

術前

術直後

術直後

術後1ヶ月

術後 1 ヶ月

術後12ヶ月

術後12ヶ月

超音波検査による軟部腫瘍の質的診断

超音波は外来で簡単にできる非侵襲的検査です。軟部腫瘍があると、この超音波検査で軟部腫瘍の存在がわかります。近年では、超音波のなかのドプラ法が進歩して、微小血管を観察する検査のなか最も優れたものとなっています。悪性腫瘍の内部には、不整なかたちをした、多くの新生血管が蜘蛛の巣のように張り巡らされています。当科では、ドプラ法でこの新生血管を観察して、良性と悪性の鑑別を行っています。

良性軟部腫瘍 悪性軟部腫瘍

超音波検査による軟部腫瘍の質的診断

良性軟部腫瘍

良性軟部腫瘍

悪性軟部腫瘍

悪性軟部腫瘍

患肢温存術

当科では骨腫瘍切除後の再建方法として、腫瘍用人工関節置換、生理的再建を行っています。生理的再建には、術中体外照射法や脚延長などがあります。それぞれの患者様に最適なものを選択しています。

腫瘍用人工膝関節置換術

腫瘍用人工膝関節置換術

腫瘍用人工膝関節置換術

腫瘍用人工膝関節置換術

腫瘍用人工膝関節置換術

骨・軟部腫瘍 (こつ・なんぶしゅよう)とは

腫瘍とは骨にできる腫瘍で、軟部腫瘍とはやわらかい軟部組織(おもに筋肉、脂肪組織、皮下、結合組織、末梢神経など)にできる腫瘍です。
体のどの部分からでも発生する可能性があります。
我々は、四肢の骨・軟部腫瘍を中心に診断と治療を行っています。

良性と悪性の違いは

良性腫瘍は、発生したところから転移することのない腫瘍です。一方、悪性腫瘍とは、他の部位に転移を来す可能性がある腫瘍です。

肉腫とは

肉腫とは骨や軟部組織に発生するがん(悪性腫瘍)です。体の表面と交通のない部位に生じますので非上皮性腫瘍とも言います。

悪性骨腫瘍

骨にできるがんには、最初から骨に発生する「原発性」のがんと、他の臓器から転移してきた「転移性」のがんとがあります。
原発性悪性骨腫瘍の代表は骨肉腫で、その他にユーイング肉腫、軟骨肉腫などがあります。

骨肉腫

原発性骨悪性腫瘍のなかでもっとも頻度の高いものです。10歳台の膝関節周囲に好発します。その割合は、100万人に1~2人の割合で発症し、年間約200人です。かつては、若者を急に襲う“不治の病”といわれ、映画やテレビドラマの題材としてしばしば取り上げられました。しかし、抗がん剤をはじめとする治療法が著しく進歩し、この15年ぐらいの間に生存率が飛躍的に向上しています。原因はわかっていませんが、がんを抑える遺伝子の異常が関与しているという報告もあります。

19歳の大腿骨に発生した骨肉腫

19歳の大腿骨に発生した骨肉腫

単純X線像

単純X線像

摘出標本

摘出標本

軟骨肉腫

骨肉腫の次に多く、大腿骨や骨盤に好発します。中年以後の悪性腫瘍です。
治療では、化学療法や放射線治療は効果が少なく、手術が唯一の選択肢です。

単純X線像 MRI

単純X線像

単純X線像

MRI

MRI

ユーイング肉腫

骨肉腫よりやや年令が低く、10歳以下から10代に発生することの多い悪性腫瘍です。大腿骨、脛骨、腓骨、肋骨、鎖骨、脊椎などに発生し、しばしば発熱や白血球増多などの全身の炎症反応を伴います。骨の外に大きな腫瘤を形成することありますが、化学療法の効果が期待できるため、術前療法を十分に行った後に手術を実施します。また、放射線にもよく反応します。

ユーイング肉腫

(Mayo ClinicのHPより)

転移性骨腫瘍

他の部位に発生したがんが、骨に転移したものです。原発としては乳がん、肺癌、前立腺がん、甲状腺がんなどが多いですが、どこのがんでも骨に転移する可能性が有ります。そのためがんに罹患した患者様で、頑固な痛みが続く場合は、主治医と相談して骨転移の検査を受けて下さい。
転移性骨腫瘍が引き起こす問題は、骨強度の低下による骨折です。骨折による強い痛みや機能の低下を防ぐために、骨折を来す前に見つけて、骨折予防のための手術を行うことが望ましいです。手術には、髄内釘、腫瘍用人工関節、骨セメントなどで骨の補強を行います。時に、放射線治療も追加します。
脊椎に転移が生じた場合は、麻痺の危険があります。これには、手術と放射線療法があります。

大腿骨の病的骨折

大腿骨の病的骨折

大腿骨の病的骨折