疾患紹介 肩関節疾患

肩関節疾患

肩関節、肩甲帯(肩甲骨周囲)、上腕骨などの疾患を中心に治療する関節外科班です。
肩関節外科に関して経験豊富な二人のスタッフが丁寧に診察、治療致します。

肩関節外科班

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肩関節が痛い

最も多いのは肩関節周囲炎と呼ばれる四十肩、五十肩です。多くは肩関節の拘縮といい可動域制限が本態となるものですが、狭義の病態は様々です。他院で肩関節周囲炎と診断されリハビリや保存的加療をされている方でも腱板断裂やその他の疾患がある方もおられます。

まず、当院肩関節外科班を受診された患者様は、問診の後レントゲン検査を受けて頂きます。持参頂いたレントゲン写真やMRIがあれば、それを元に診察を開始いたします。肩関節の診察は整形外科医でも診断に苦慮することがあり、専門性の高い領域と言えます。私たちは、最初の診察でその患者様に追加の検査(肩関節造影検査やMRIなど)が必要かどうかを判断します。肩関節の中の(関節内)病変、肩関節の周囲(腱板や滑液包など)の病変の可能性を判断し、治療方針を決定します。

関節は骨と骨のつながりで作られていますが、肩関節は骨と骨の接点が少なく、周囲の筋肉や関節包といった軟部組織の働きが重要となります。例えば、俗にインナーマッスルといわれるような腱板という組織は、筋肉でありながら上腕骨と肩甲骨を関節包と一体となって関節の最も深い場所で接合しています。腱板は腕を挙げる際の安定性に関与したり、腕を挙上する際に補助的な筋力を発揮します。この腱板機能が破綻すると「腕を挙げることができない」、「高いところにある物を取ることができない(痛い)」という症状が出現します。一方腱板に損傷がなくても、周囲の組織と癒着することで肩関節を硬く(拘縮という病態)させたり、痛みを生じさせたりします。この場合、「腕を後ろに捻る動きができない」、「あるところで肩関節の動きが止まってしまう」「その時に痛みが走る」という症状が出現します。

そこで、私たちは治療を含めた動的検査として肩関節の関節造影を行っています。関節造影検査では、関節の中に注射針で造影剤と局所麻酔を注入します。このとき、さきほどの腱板に損傷があればMRIでとらえきれない小さな損傷でも関節外への造影剤の漏れとしてレントゲンで描出されます。また肩関節内に造影剤が注入されることで、関節内部で生じた癒着を関節内部から剥離し、関節の動きを改善します。また癒着や関節の萎縮により関節内圧が上がり痛みを生じているような病態では、関節液の逃げ道を作ることで関節の圧を下げ疼痛を軽減します。このように、関節造影検査により動きを改善させ、痛みを軽減できる可能性があります。
このような治療(検査)を行っても、なお肩の痛みが取れない、腕が挙がらないというような患者様には手術が考慮されます。

肩関節が痛い

当院における肩関節疾患に対する手術的治療

肩関節腱板断裂

現在多くの施設では肩関節疾患に対し関節鏡視下手術が行われています。 関節鏡視下手術は膝関節でその治療法が確立され、股関節、肩関節、肘関節、手関節などにも応用されるようになりました。 肩関節の鏡視下手術の場合、約1cm弱のポータル(穴)を約5か所に設置されます。一方、当院では5cmの皮膚切開を行い、断裂形態を正確に把握し修復します。腱板機能の回復を第一に考え、カメラではなく肉眼で腱板を確認し、確実に骨に修復することが重要と考えます。また、切開範囲に関しましても約5cmの切開ですので、鏡視下手術の全ポータルを合計したものと侵襲は大きく違わないと考えております。肩関節における腱板部分はスペースとしては非常に狭く、関節鏡で腱板の断裂形態、質、上腕骨頭をどのように覆うかを判断するのは難しいと考えています。また、関節鏡視下手術では手術時間が長い傾向があり、切開する事で大幅に手術時間を短縮する(手術時間40分から1時間前後)ことで全身に対する負担を軽減する事が出来ます。

肩関節腱板断裂1

さらに2014年4月から腱板広範囲断裂つまり腱板断裂のなかでも非常に大きい断裂に対し、リバース型(逆行型)人工関節の使用が日本で承認されています。当科でもこのリバース型人工関節を導入しており、これまでは縫合困難とされてきた非常に大きな腱板断裂に対し上肢の挙上の獲得目的で施行しています。簡単に言うと肩関節は肩甲骨と上腕骨という骨と骨でできた関節でありますが、その構造は肩甲骨の関節窩(カップ)と上腕骨頭(ボール)の関係で成り立っています。その周囲は関節包と腱板という軟部組織で覆われていて、腕を挙上させる際に三角筋と協調して働きます。その腱板の広範囲な機能不全に対し、リバース型(逆行型)人工関節が導入されました。その名の通りカップとボールが逆の関係、つまり肩甲骨側にボール、上腕骨側にカップを設置する人工関節であります。この形状により、上肢挙上の最も大きい三角筋の筋力を“腱板機能の助けなし”に、十分に発揮することができ挙上を獲得することができるのです。しかし、日本で導入されて間もない手術方法でありますので、今後様々な合併症が報告されてくると思われます。我々もそれらの報告に注意しつつ、適応は慎重に検討し、しかし機能獲得できると予想される患者様には積極的に使用していきたいと考えています。

肩関節腱板断裂2

反復性肩関節脱臼

“肩関節が緩い”状態を来す疾患があります。肩関節を脱臼すると、ある一定の割合で何度も脱臼を繰り返す反復性肩関節脱臼という状態となる患者様がいます。この病態を治療するには基本的には手術療法しか選択肢がありません。そして、この反復性肩関節脱臼には様々な手術方法があります。当院ではコンタクトスポーツ(ラグビー、アメリカンフットボールなど)や、それに準じたスポーツ競技を行う患者様にはBristow変法という方法を用いています。肩関節の繰り返す脱臼は主に前下方への脱臼であり、それを予防する為に、烏口突起(肩甲骨にある骨の突起)を切離し、靭帯、腱成分を残したまま肩甲骨臼蓋(関節窩)の前下方に打ち込みます。そうする事で前下方に壁が出来、上腕骨骨頭が脱臼しなくなります。また、術後療法も自宅で行う事が出来ます。再脱臼率も低く、優れた治療法と考えます。
また、肩関節の不安定性が強い方や、亜脱臼を繰り返すような方にはPutti-Platt変法を用いています。前方に位置する腱板である肩甲下筋腱を切離し関節内から緩んだ関節包に糸を掛け引き上げ肩甲下筋腱に縫合する方法です。不安定性の強い方でも再脱臼が少ない非常に優れた手術法です。このほか、関節鏡を用いた関節唇の損傷を修復する術式もあり、病態により手術方法を選択します。

反復性肩関節脱臼

肩関節不安定症

“肩関節が緩い”病態のなかで肩関節に不安定性があり、上肢を挙上した際(肩関節屈曲肢位)、上腕骨頭が後下方へ脱臼してしまう病態があります。これらの病態を防ぐには挙上方法を改善する指導以外では手術療法が選択されます。上後腸骨棘より自家骨を採取し、肩甲骨臼蓋(関節窩)後下へ骨移植を行います。脱臼の形態、年齢によって、肩甲骨臼蓋の骨切りを行いその部位へ骨移植をするglenoid osteotomyを行うか肩甲骨臼蓋後下方へそのまま移植し、内固定をするglenoplastyを行うかを決定します。