疾患紹介 膝関節疾患

膝関節グループでは主にスポーツ/関節鏡班と人工膝関節班で診療しています。

■関節鏡外科医のブログ

関節鏡外科医のblog

当グループで行なっている最新の関節鏡手術や、
学会・研究活動などを知っていただくためのブログです。

スポーツ/関節鏡班

スポーツ関節鏡班では主に、スポーツ選手の下肢関節疾患に対し、関節鏡を用いた手術を行なっています。早期にかつ、安全にスポーツ復帰していただく様に手術方法も工夫しております。

ACL再建術

当科では大部分の症例で、ハムストリング(ほとんどの症例で半腱様筋腱のみ採取し、これを半切して使用)を用いた解剖学的2重束再建術を行なっております。柔道、ラグビーなどのcollision sportsや再再建にはBTBを用いています。 近年、ACL大腿骨側付着部の解剖が詳細に検討されるようになり、ACL付着部にridgeなるものが存在し、このridgeを手術中に確認することによって、解剖学的な位置に骨孔を作成することが可能となりました(図1)。従来はinside-out法にて大腿骨骨孔を作成しておりましたが、ridge内に骨孔を作成することが困難な症例が多数みられました。そのため、現在は前内側線維束(AM)骨孔、後内側線維束(PL)骨孔作成時にoutside-in法で行なっております(図2,3)。Ridge内の解剖学的位置に骨孔が作成された場合、ridge外に作成された場合と比較すると、回旋不安定性を示すpivot shift test陰性の割合が大きくなりました(図4)。さらに、Pittsburg大学からの1重束再建か2重束再建かのlevelⅠのmeta-analysisでは、2重束再建の方が前方移動、回旋不安定性ともに制動されたと報告されています。

図1 AM骨孔作成位置をマーキングしている 図2 Outside-in法にてAM骨孔作成している

図3 外顆内壁を郭清し、Ridgeを確認 Ridge後方に骨孔作成

図4 Non-anatomicalな骨孔位置 Anatomicalな骨孔位置

図1

AM骨孔作成位置をマーキングしている

AM骨孔作成位置をマーキングしている

図2

Outside-in法にてAM骨孔作成している

Outside-in法にてAM骨孔作成している

図3

外顆内壁を郭清し、Ridgeを確認

外顆内壁を郭清し、Ridgeを確認

Ridge後方に骨孔作成

Ridge後方に骨孔作成

図4

Non-anatomicalな骨孔位置

Non-anatomicalな骨孔位置

Anatomicalな骨孔位置

Anatomicalな骨孔位置

ACL遺残組織(remnant)には神経終末や、血管が多数存在しています(図5)。そのため、再建時にこのremnantを切除するのではなく、神経筋協調(proprioception)、血行の早期改善目的に、remnantを積極的に温存しております。Remnantを温存することで、移植腱の早期再生につながると言われています。方法は、remnantに2〜3本のsutureをかけ(remnantは通常12時方向に癒着していることがおおいため)、内側に寄せながら(図6)、大腿骨外顆内壁を郭清し、ridgeを確認します。骨孔を作成後、移植腱挿入時に同時に骨孔内へpull-outし、remnant自体にtensionをかけるようにしています(図7)。Tensionをかけることにより、術後のcyclopsの発生や、滑膜異常増殖によるimpingementの予防になると考えています。Remnantを温存させた解剖学的2重束再建術は、全国でも限られた施設でしか行なわれていません。ACL術後の最大の問題の1つは再受傷(再建靭帯再断裂)です。Remnantを温存し、移植腱の早期再生を促すことで、再受傷頻度の減少につながると考えています。

図5 ACL remmant 図6 Remmantにsutureをかけたところ

図7 ACL remmant

図5

AACL remmant

ACL remmant

図6

Remmantにsutureをかけたところ

Remmantにsutureをかけたところ

図7

Remmantをpull-outしたところ

Remmantをpull-outしたところ

AM束を挿入して完成

AM束を挿入して完成

当科でのACL再建術の入院期間は2週間ほどです。スポーツ復帰は条件にもよりますが、術後6~8ヶ月としています。

半月板手術

半月板損傷に対しては、積極的に縫合しております。年齢が若い場合で、断裂部の条件が悪い場合にはfibrin clotを用い、縫合部の治癒を促進させる努力をしています。半月板縫合はinside-out法とoutside-in法を縫合場所により併用しております。 円板状半月板損傷症例においても、強い変性が見られない場合、形成切除後に縫合を行っております(図7)。円板状半月板損傷に対する手術は、以前は亜全切除が一般的でした。しかし、最近の学会では、半月板切除は避けるべきという流れになってきています。それは、半月板切除後に痛みや水腫が続き、スポーツ復帰ができない症例が少なくないからです。強い変性があれば切除は仕方ないと思いますが、当科でも以前なら切除していたような断裂でも積極的に縫合するようにしています。縫合した場合は3週間の伸展位固定、非荷重としております。

図7 Complete discoid Peripheralでの断裂 形成切除後、前節部はOutside-in法で縫合 縫合後

図7

Complete discoid

Complete discoid

Peripheralでの断裂

Peripheralでの断裂

形成切除後、前節部はOutside-in法で縫合

形成切除後、前節部は
Outside-in法で縫合

縫合後

縫合後

Baker's cyst

Baker's cystは1877年にBakerが報告したのが最初です。以前は後方approachにての切除が行われていました。しかし、再発率が高く、手術創も大きいことが欠点でした。Baker's cystは関節内病変(最も多い原因は半月板損傷)が存在していることが原因です。関節内病変が残っていれば再発します。当科では、このBaker's cystに対して、関節鏡にて関節内病変の処置を行い、さらに、後内側portalと経cystic portalを作成して、関節鏡視下にcystectomyを行なっております。切開手術と比較し、侵襲は低く、入院期間も短く済みます。

Baker's cyst Cystの入り口 後内側portalと経cystic portal Cyst内壁の郭清

図8

Baker's cyst

Baker's cyst

Cystの入り口

Cystの入り口

後内側portalと経cystic portal

後内側portalと経cystic portal

Cyst内壁の郭清

Cyst内壁の郭清

Trans-septal approach

一般的に、膝関節鏡は前内側portalと前外側portalを作成しますが、この2つのportalからでは膝関節後方compartmentの鏡視は不可能です。そのため、当科では、後内側portalと後外側portalを作成し、PCLの後方にあるseptumを破ることで、trans-septal approach (図10)として、今までの関節鏡手術ではapproachが困難であった後方compartmentへのapproachを可能としています。これらのportalを作成することで、RAや感染などのsynovectomy、また、膝関節後方に存在する結節型PVNSやganglion(図11)、osteochondromatosis、PCL avulsion fractureなど、以前なら腹臥位、後方切開でapproachしていた症例に対しても、関節鏡のみで処置できる選択肢が増えました。

図10 Trans-septal approachで得られる視野 Trans-septal approach Trans-septal approach図 図11 後内側compartmentの観察内側半月板ganglionが確認できる Trans-septal approachで得られる視野(後内側portalより鏡視)

Trans-septal approach

Trans-septal approach

図10 Trans-septal approachで得られる視野

Trans-septal approach

Trans-septal approach

Trans-septal approach図

Trans-septal approach図

図11

後内側compartmentの観察内側半月板ganglionが確認できる

後内側compartmentの観察
内側半月板ganglionが確認できる

Trans-septal approachで得られる視野(後内側portalより鏡視)

Trans-septal approachで得られる視野
(後内側portalより鏡視)

股関節手術

1999年にスイスのGunzらがFAI (Femoroacetabular Impingement)という概念を提唱して以来、股関節鏡手術に注目が集まっています。本邦では股関節鏡症例数は産業医大が最多です。当科では以前はFAIに対し、切開し、股関節を脱臼させて行なっておりました。現在はFAIのみならず、臼蓋形成不全に対する骨切り術時にも股関節鏡手術を行い、関節唇の縫合を積極的に行なっております。(臼蓋形成不全股は前股関節症であっても、高率に関節唇損傷が存在していることが報告されています。)

FAIは1次性股関節症の原因のひとつと言われています。診断方法はimpingement testや、FABER testでの左右差で診断します。臼蓋側が出っ張っているPincer typeと大腿骨骨頭頚部移行部が出っ張っているCam typeがあり、両者の合併が77%であると言われています。股関節は体内深部にある関節のため、フラクチャーテーブルにて下肢を牽引し、股関節を開大させて鏡視を行います。

股関節手術

Baker's cyst

Baker's cystは1877年にBakerが報告したのが最初です。以前は後方approachにての切除が行われていました。しかし、再発率が高く、手術創も大きいことが欠点でした。Baker's cystは関節内病変(最も多い原因は半月板損傷)が存在していることが原因です。関節内病変が残っていれば再発します。当科では、このBaker's cystに対して、関節鏡にて関節内病変の処置を行い、さらに、後内側portalと経cystic portalを作成して、関節鏡視下にcystectomyを行なっております。切開手術と比較し、侵襲は低く、入院期間も短く済みます。円板状半月板損傷に対する手術は、以前は亜全切除が一般的でした。しかし、最近の学会では、半月板切除は避けるべきという流れになってきています。それは、半月板切除後に痛みや水腫が続き、スポーツ復帰ができない症例が少なくないからです。強い変性があれば切除は仕方ないと思いますが、当科でも以前なら切除していたような断裂でも積極的に縫合するようにしています。縫合した場合は3週間の伸展位固定、非荷重としております。生や、滑膜異常増殖によるimpingementの予防になると考えています。Remnantを温存させた解剖学的2重束再建術は、全国でも限られた施設でしか行なわれていません。ACL術後の最大の問題の1つは再受傷(再建靭帯再断裂)です。Remnantを温存し、移植腱の早期再生を促すことで、再受傷頻度の減少につながると考えています。

Baker's cyst

Baker's cyst

Baker's cyst

器具は股関節鏡専用の鏡視セットが必要です。Portalは2箇所で行います(各1cmほどの皮切)。手術方法はPincer部分の関節唇をtake downし、出っ張っている臼蓋部分を削ります(図14)。その後、関節唇をアンカーにて再逢着します。ついで、骨頭頚部移行部のcam lesionを削ります。入院期間は3週ほどです。

変性してflapとなったlabrum Labramを臼蓋からtake downしてPincer部を削る

Take downしたlabramをanchor3本にて縫合 Cam osteochondroplasty

変性してflapとなったlabrum

変性してflapとなったlabrum

Labramを臼蓋からtake downして
Pincer部を削る

Labramを臼蓋からtake downして
Pincer部を削る

Take downしたlabramをanchor3本にて縫合

Take downしたlabramをanchor3本にて縫合

Cam osteochondroplasty

Cam osteochondroplasty

足関節鏡手術

当科では足関節鏡を施行する際は、踵骨に直達牽引を入れ、下垂位で行なっています。そうすることで、関節裂隙を開大させることができ、膝用の関節鏡を使用することが可能です。小さい関節鏡では視野不良となるため、膝用関節鏡を使用しています。

足関節鏡手術

Osteotomies around the knee(膝周囲の骨切り術)

当科では壮年期の変形性膝関節症、スポーツ継続を希望される方、可動域が良好な変形性膝関節症に対して、osteotomy(骨切り術)を行なっております。骨切り術とはO脚やX脚の膝をまっすぐの膝に矯正する手術です。Locking plateという丈夫なplateと人工骨を用いることで、術後翌日から全荷重で歩行が可能、3週で退院となり、以前と比べ、長期の非荷重、固定が必要なくなりました。また、大腿骨内顆骨壊死などに対しても骨切り術が有効です。

術前(O脚)術後

術前(O脚)

術前(O脚)

術後

術後

大切なことは脛骨骨軸に対し、脛骨関節面が垂直であることです。強いO脚変形がある場合は脛骨のみで矯正すると、この関節面の傾きが非生理的になるため、大腿骨と脛骨を骨切りするDouble osteotomyを行い、生理的な膝にしています。

Double osteotomy

さらに外側半月板切除後の外反変形関節症膝に対して、外側半月板を半腱様筋腱で再建し、大腿骨の骨切り術を行なう治療をしています。

A-P Weight-Bearing Radiograph

さらに外側半月板切除後の外反変形関節症膝に対して、外側半月板を半腱様筋腱で再建し、大腿骨の骨切り術を行なう治療をしています。

人工膝関節(TKA)班

膝関節疾患の代表的なものに、変形性膝関節症(膝OA)があります。国内での自覚症状を有する膝OA患者数は約1000万人と言われ、潜在的な患者数は約3000万人と推定されています。基本的には内服・注射・筋力強化・足底板などの保存的治療を行い、十分な除痛が得られず、日常生活に支障を来す場合には外科的治療を検討させていただきます。具体的には、年齢、活動性、関節の破壊の程度を考慮しながら、人工膝関節全置換術 (TKA)、高位脛骨骨切り術(HTO)や単顆型人工膝関節置換術(UKA)を選択します。比較的年齢の若い方で、スポーツや仕事など活動性の高い方に対しては、御自身の膝関節を温存できる骨切り術(Open Wedge HTO)を積極的に行っており、術後のリハビリ期間も短くするいろいろな工夫を行っております。また関節リウマチ (RA) や大腿骨または脛骨の骨壊死(ON)に対する手術も積極的に行っております。

当院の人工膝関節置換術の特徴

より正確な人工関節設置を目指して
(ナビゲーションシステムを用いた人工膝関節置換術)

当科では大部分の症例で、ハムストリング(ほとんどの症例で半腱様筋腱のみ採取し、これを半切して使用)を用いた解剖学的2重束再建術を行なっております。柔道、ラグビーなどのcollision sportsや再再建にはBTBを用いています。 近年、ACL大腿骨側付着部の解剖が詳細に検討されるようになり、ACL付着部にridgeなるものが存在し、このridgeを手術中に確認することによって、解剖学的な位置に骨孔を作成することが可能となりました(図1)。従来はinside-out法にて大腿骨骨孔を作成しておりましたが、ridge内に骨孔を作成することが困難な症例が多数みられました。そのため、現在は前内側線維束(AM)骨孔、後内側線維束(PL)骨孔作成時にoutside-in法で行なっております(図2,3)。Ridge内の解剖学的位置に骨孔が作成された場合、ridge外に作成された場合と比較すると、回旋不安定性を示すpivot shift test陰性の割合が大きくなりました(図4)。さらに、Pittsburg大学からの1重束再建か2重束再建かのlevelⅠのmeta-analysisでは、2重束再建の方が前方移動、回旋不安定性ともに制動されたと報告されています。

ナビゲーションシステム ナビゲーション画面

ナビゲーションシステム

ナビゲーションシステム

ナビゲーション画面

ナビゲーション画面

手術直後から痛くない膝を目指して

人工膝置換術後の問題点の一つとして術後疼痛が挙げられます。骨を削る手術ですので、手術後当日および翌日の創部周辺の痛みは患者様にとって大きな問題です。それに対して術後の痛みを軽減する方策として、点滴から鎮痛薬を持続的に注入する方法、硬膜外カテーテルから局所麻酔薬・医療用麻薬を持続的注入する方法、手術部位に分布する末梢神経のブロックなどが各施設で試みられています。我々が現在行っている方法は、膝関節周囲カクテルブロック療法というもので、この方法は関節周囲の筋肉、靱帯などの軟部組織に局所麻酔薬、消炎鎮痛剤などの混合液を直接投与し、痛みの軽減を図る方法です。具体的には手術中、骨を切った周囲や切開した筋肉周辺などの関節周囲組織へ薬液の注入を行います。カテーテルの留置などはありません。この方法を始めてから、術直後より患者様自身の力で、痛みなく膝関節を曲げることが可能となっています。

膝関節周囲カクテルブロック療法

膝関節周囲カクテルブロック療法

膝関節周囲カクテルブロック療法

オーダーメイドによる人工膝関節置換術

私たちは、PSI(Patient-Specific Instrument)を用いた人工膝関節置換術を行っています。 PSIとは3次元画像データに基づいて一人ひとりに適した手術計画を行い、人工関節手術器械をオーダーメイドするというものです。

骨の形は一人ひとり異なります。そのため、人工膝関節置換術には多くの手術器械が必要となります。また、レントゲン像を用いて術前計画を行うため精度が低くなるため、手術中に調整が必要となります。PSIは3次元画像(CT,MRI)をもとに術前計画を行うため、精度の高い計画が可能となり、使用する器械の数も減らすことができます。また、ほかには手術における器械を減らすことで、PSIでは不要である脛骨や大腿骨に挿入する髄腔内ロッドを用いることで生じる出血も減少すると考えられています。 このように、一人ひとりの骨の形に合った患者様専用のオーダーメイドの手術器械を作成することで、正確な人工関節の設置、低侵襲による手術、手術時間の短縮が得られます。

オーダーメイドによる人工膝関節置換術